えんため備忘録

観たもの、聴いたもの、感じたこと、考えたことについて書きたいなーと。

背すじをピン!と「STEP85 二年後③」感想

週間少年ジャンプ 2017年 10号掲載分の感想です。

 

ついにこの煽りが付いてしまいました…「次号、クライマックス大増23P!!」。

いやー、クライマックスですよクライマックス。これまで「きっと続くはず」的なエントリ上げてきましたが、こうなってしまってはもうお手上げですね、はい。。もはや完結は目前に迫ってる様です…ぐはっ…!!(吐血)

 

ただそんな完結間近の今号は、おそらく読者の誰もが予想しなかったであろうまさかの描写。完結目前でそれを描く!?という驚きとともに、横田先生の凄さに脱帽するしかない回でした。漫画家って凄いんだなと、改めて思った次第です。。詳しくは下で。

 

まずは金ツバ競技ダンス企画からスタート。

おぉ、ゾノきゅんたちもプロ資格を得ているとは…!!ラテンに転向してから調子が良いとのこと。描かれてきたキャラクター的に、ラテンの方が向いてたというのには納得ですね。二年前の全国大会、めぐちゃんの涙に心打たれた身としては、無事に番組企画が続いてくれて嬉しいです。

 

そしてなんとゾノきゅん組も八巻組同様、海外派遣選考会に参加。おかげで八巻組の勇姿を見れるかもしれないと、合宿先でテレビに群がる鹿高競技ダンス部の面々。

そんな中、男子部屋に女子が集まってきた時の1年生男子たちの反応がやたらと可愛い。笑

そして「もちろんメインはゾノきゅん組だから、八巻組は映らないかもしれない」という当然の意見に対しての『マジかよゾノきゅん最低だな』→『なんでだよ』の流れにややウケ。笑『ゾノきゅん最低だな』って言ったの絶対御門くんでしょ。笑

前話から登場したにも関わらず、台詞だけで誰だかわかるこのキャラの立ち方よ。

 

とかなんとか言ってると、いきなりゾノきゅんの背後に八巻組が映ります。相変わらず喧嘩している。笑

(ただ今回はこの「喧嘩している」という、ある種今まで通りの描写も、展開上とても重要になるのですが、この時は分からず。。)

 

たった2コマですが、八巻たちの卒業とそれを見送る後輩たちの様子がまた良いですね〜。頼りになる3年生たちと、それをそれぞれの仕草で見送る下級生たち。

作中では描写されませんでしたが、八巻部長時代もきっと充実していたんだろうことがこの2コマから窺えます。

そしてそのコマの前後に連なるつっちーとひらりんのモノローグがまた良い。なんてことはない台詞なんですが、それぞれの思い出に思いを馳せる感じがなんとも…ザ・青春。青春が眩しい。横田先生はちょっとしたことで青春を想起させるのが本当に上手い。

 

続いて場面は海外派遣選考会に参加する面々の描写に移っていきます。

大学生日本一やプロB級のファイナリストなど錚々たる面々が並ぶ中、遅れて会場に到着した八巻組。いつも通りの喧嘩中。

そして周りの面々にも物怖じすることなく「相手が誰でも関係ねぇ…!」と言い切る。これもいつも通りの八巻です。

そんな八巻に対して、何やら意味深な沈黙を見せる畔田…何か思うところがあった様子。思えばここから既にこの先の展開が仄めかされていたんですね。

 

「俺たちが目指してんのは部長やリオ先輩たちがいる世界」「ここはただの通過点だ…!」と意気込んで一次予選に挑む八巻と秋子ですが、結果は48組通過の内の40位通過。学生時代に互いに競い合っていたはずの畔田・仙崎組が4位だったにも関わらず、です。

続く二次予選。「こんなところで終われるか!」となんとか気を持ち直して挑もうとする2人ですが…結果はまさかの二次予選敗退。

いやーこれは正直まさかの展開でしたね。これまで、才能に恵まれ、高校生トップ陣の牙城を崩すまではいかないまでも何がしかの爪痕を残してきた彼らが、二次予選すら突破できないとは。彼らが鹿高ダンス部に入部して初めての大会に出た際も、みちるちゃん先生曰く「たしか準決くらいまで行ってなかった?」とのことだったので(STEP11参照)、もしかしたら二次予選敗退は彼らにとって初めての経験だったかもしれません。

肩を落とし愕然とした様子で座り込む二人。そこに現れるタツ小竹先生。「こんなはずじゃなかったっす…」とこぼす八巻に、小竹先生は言い放ちます。「100年早い」と。遅れてきたことをどうこう言うつもりはない、ただ心構えの話だ、と。

ここで冒頭からの喧嘩シーンが回収されていきます。喧嘩をしていたのは、今まで通りの八巻組の描写として受け取ってしまいましたが、「今まで通り」じゃダメなんですよね。プロの世界がそんなに甘いもののはずがない。慣れない電車で間違えて遅れてしまった、そこまでは仮にしょうがなかったとしても、その後にワーワーと喧嘩しているよりもやるべきことがあったはず、ということでしょう。

プロになって日も浅いお前らが、できうる限りの準備をする努力を怠ってどうするんだ、と淡々と小竹先生に説かれ、ようやく自分たちに足りなかったものに気づく二人。自分たちの弱さに直面させられ大きなショックを受けながらも、「もう一度鍛え直してやってください…!!おねがいします…ッ!!」と頭を下げます。。

 

さて、今回のこの描写は、考えれば考えるほど、凄い、と思わされるものでした。

まさか、「次号クライマックス」の煽りが付く最終回を目前にしているであろうこのタイミングでまで、漫画的な都合の良さを排除して厳しいリアルを描いてくるとは。こんな展開、読者の誰が予想できたでしょうか。少なくとも私は全く予想していませんでした。驚愕です。

 

そして「今このタイミングでそれを描くんですか!」という意外性に驚かされつつ、それでいて確かにとても必要な描写だと思わせられました。

アマチュアだった「これまで」と、プロとしての「これから」。

もう今までとは違うこと。でもその道を歩むのであれば、これから先もずっと続くこと。

二人が選択した道、その世界への敬意。

そういったものが詰まった描写だったと思います。

 

一読者としては、どうしても都合のいい話を期待してしまうんですよね。どうしても、エンタメとしてカタルシスのある、読んで気持ちの良い展開を期待しがち。そんな中、今回の話はそんな一読者としての、ある種浅はかな期待を大きく裏切り、「キャラクターの人生」をしっかりと描いて見せてくれました。

もともとずば抜けたセンスを持っていた八巻組、ダンスを始めてから比較的早い段階で準決勝や決勝に出るのが当たり前になったであろう二人であれば、今回の様に「自分たちの驕りに気づけなかった」のも、ある種必然だったと思うんですよね。

そしてプロという道を選んだ以上、どこかでその驕りに足元をすくわれるのもまた必然だった。どんな競技であっても、プロという道がそんな甘いものであるはずがないのだから。

それを、たとえ完結目前であろうがしっかりと描いたこと、そこには横田先生のキャラクターへの真摯さを感じます。キャラクターが、読者はもちろん作者の「都合」で動かされてるんじゃなく、あの世界で本当に生きていて、これから先もその人生は続いていくんだ。そんなことを示してくれた、第85話でした。

 

当たり前ですが、物語の作者というのは、誰よりもその作品中のキャラクターに向き合って、誰よりもそのキャラクターたちのことを考えた存在なんだな、と。だからこそ唯一、そのキャラクターに命を吹き込むことができる。自分本位な目線でいる読者とは、そもそも次元が違うところに立っているんだなぁと。今回の話を読んで、そんなことを思いました。

まぁ言い換えれば、そうやってキャラクターに真摯に向き合えるからこそ、作者に、作る側になれるんだと思うんですけども。今回改めて凄いなぁって思わされた次第です。

ほんとにもう、こんな展開で来るとは想像してなさすぎて、打ちのめされた気分です。脱帽です。凄すぎます横田先生。凄すぎて、最終的に「凄い」しか言えなくなる作中のつっちー状態です。凄い。凄いや。はー。

 

最後、気持ちを新たにした八巻たちが、つっちーたちに激励の電話をし(、ついでに「遅刻すんなよ」と釘を刺し笑)、改めて練習に向かう様子で今号は幕を閉じます。

ここの「再び、前を向くーー!!」という煽りがまた良いですね。まだまだ道は続く。願わくば、八巻組のこれからに幸あらんことを。。

 

さて、土井垣組→八巻組とそれぞれ描写が一区切りついたと思われるところで、次号こそ本格的に鹿高競技ダンス部の描写になるんでしょうか。

クライマックスとはついたものの、次で終わるのか、はたまた更にもう1週くらいあるのか分かりませんが(なるべく終わらないでほしいと往生際悪く願っている笑)、次号も変わらず楽しみに待ちたいと思います。

 

 

ってもう明日発売ですが。。笑

私の毎週月曜のジャンプ楽しみ度の50%は背すピンが占めてるので、終わってしまうと個人的には結構な一大事です。終わっても大丈夫な様に心構えだけはしておこう…ドキドキ